Liverty代表

家入一真

Kazuma Ieiri
1978年生まれ福岡県出身。起業家。ライバルは親鸞。解放集団Liverty代表|駆け込みシェアハウスLiver邸、解放学校、解放食堂|ペパボ、ブクログ、CAMPFIRE、studygift、BASE、partycompany、オンザコーナーなどを創業したり上場したり。著書「お金が教えてくれること」「もっと自由に働きたい」他
家入一真

若い人たちに相談をされることが多いけれど、その中でも起業についての相談が特に多いです。起業したいけれどそれってリスクですよね、とか。僕にとってリスクって、究極言えば死んじゃうことだから、起業して失敗しても死ぬことは無いですからね。筋が悪いところから借りたらどうか分からないけれど、銀行なら「月に1万円ずつしか返せないです」って言ったら、それはもうしょうがないですし。覚悟を決めて、ってよく言いますけど、例えば音楽の道に進むかサラリーマンになるかとか。

それって、どちらかにしないとダメってことはないですから、両方とったらいいと思うんですよ。もっと欲張りになってもいいと思う。人はすぐに分けたがる。ゼロかイチかとか。仕事ならオンとオフとか。両方一緒でいいと思うし、分けたがるのは思考の放棄ですよね。実際、世の中っていうのはもっと細かい、グラデーションでできているんだから、ゼロとイチの間の気持ちの良いところをとるべきですよ。

自分はこんな存在じゃない

家入一真

北野たけしさんが言っていたことなんですけど、あの人は映画監督とか芸術家の側面とコメディアンという側面がありますよね。それを振り子に喩える。おもいっきりバカなことができるから、おもいっきり映画が撮れる。その振り子の両軸が僕たちからみたら魅力に思えるわけ。どれか一つじゃないんですよね。

中学、高校と不登校を繰り返した僕がpaperboy&co.(ペパボ)を創業したのは、普通に働くことができなかったから。でも、家族を養っていかなくちゃいけないし。当時、ホームページを作って自分の作品を並べていたら、思わぬ反響があったことから「もっと学生でも使えるくらい安いサーバーがあったら」と思いついたのが「ロリポップ」というサービス。これがうまくいって、あっという間にペパボは上場企業になっていきました。

適材適所だと思うんですけれど、僕はどんどん自分がやっていたことを人に任せるようになって、その内に会社で笑ってるおじさん、みたいな存在になっていったんです。事業はうまくいっているのに、違和感しかないんですよ。自分は本当はこんな存在じゃない、という感覚。でも、社長なので、株主総会とかで僕が前に立って喋ると株価が下がるんですよ。周りからは「もっと上場会社の社長を楽しめばいいのに」と言われましたけど、退任をすることにしました。

会社は法人って言いますけど、人格がある。自分が目指す道と、法人が目指す道が違えばどこかで分離してしまう。自分を殺して成長させることもできたかもしれないけれど、会社の成長も望むし、僕も他にやりたいことがありましたから、そこは覚悟でもないですね。

僕はずっと逃げて生きてきた。本でも、逃げろって書く。よく「辛いことから逃げるな」って言いますけど、逃げたっていい。別の見方をすれば、逃げるってことは前に進むわけだから、周りに迷惑をかけても逃げた先で居場所を作ればいいと思う。

Livertyという会社は僕にとってそういう場所。昔は僕もひきこもりでしたから、昔の自分が「あったらいいのに」と思う場所。ダメ人間たちが集まる場所。ダメ人間って言っちゃいますけど、まず自分で自分をダメ人間って認めることから始めないといけない。ハゲの人が自分のハゲをネタにしたら無敵ですよね。企業家なんてなんにもエラくない。僕なんてエクセルもワードもできないし。でも、皆で集まれば誰かが助けてくれるんですよね。「オレ、これやるわ」って。

死ぬまで何かやる

家入一真

夢って何ですか?って聞かれるけれど、夢は、無いんです。ずっと目の前にある楽しいことをやってきたから。夢を持たなくちゃいけないっていうのがおかしいと思う。夢を持つことは勿論いいけれど、無理に夢を持って、それにハマっちゃう人いますよね。無いなら無いで、自分の半径数メートルの人を幸せにすることを考えたらいいと思う。

ペパボをやっている時に感じた違和感。僕は、絵を描いたり駅前でオカリナを吹いたりして日銭を稼ぐのが合っている人間なんですよ。ペパボが上場企業になった時、成功しましたね、とかインタビューで言われましたけど。違和感しかなかった。僕はずっと逃げながら生きてきた。嫌なことはやりたくないし、できない。

ずっと、死ぬまで何かやっていると思う。悠々自適とかじゃなくって、病気のように刺激を求め続ける。最近になって、若い人たちを応援したいっていう気持ちも出てきたので、そういう場も数多く作っていきたいです。

※記事の内容は取材当時のものとなります

プロフィール

氏名
家入一真